WS7-3†Back
哺乳類でのヘテロクロマチンのエピジェネティック可塑性
*眞貝洋一
理化学研究所・開拓研究本部・眞貝細胞記憶研究室
多細胞真核生物において、ヘテロクロマチンは染色体の機能維持・制御において、細胞種特異的な遺伝子発現とゲノムの安定性に重要な役割を果たしている。哺乳類の核内では、ヘテロクロマチンは転写活性の高いゲノム領域から隔離されており、大きな凝縮した不活性ドメインとして存在する。しかし、ヘテロクロマチンの空間的な構成に関する基本的なメカニズムは、まだ十分に理解されていない。H3K9とH3K27のトリメチル化は、構成的ヘテロクロマチンおよび条件的ヘテロクロマチンを定義する2つの主要なエピゲノムである。哺乳類では、少なくとも5種類のH3K9メチル化酵素と2種類のH3K27メチル化酵素が存在している。本講演では、この5つのH3K9メチル化酵素の変異細胞とH3K27メチル化酵素阻害剤DS3201を組み合わせて、ヘテロクロマチン形成・維持におけるH3K9およびH3K27メチル化の役割に関して検討した結果を紹介したい。解析の結果、H3K9メチル化が消失すると通常H3K9me3とは分離して存在しているH3K27me3が本来H3K9me3がマークしていた領域に再分配されること、H3K9とH3K27の両方のメチル化が失われるとヘテロクロマチンの凝縮と空間構成が損なわれることが示された。この結果は、哺乳類ヘテロクロマチンは可塑的であり、H3K9me3/2によりマークされているヘテロクロマチン構造は、2つの主要な抑制的エピゲノム経路により排他的にしかし冗長的に維持されている、ことを示すものであった。
keywords: ヘテロクロマチン、H3K9メチル化、H3K27メチル化
Epigenetic plasticity of heterochromatin in mammals
Yoichi Shinkai
RIKEN