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イヌの家畜化にみる行動と遺伝子の変化
*菊水健史[1][2]・永澤美保[1][2]
[1]麻布大獣医学部, [2]麻布大ヒトと動物の共生科学センター
イヌ(Canis familiaris)は最初に家畜化された動物であり、今日では何百種類もの犬種が認められる。家畜化の過程で、イヌはその気質、行動、認知能力に応じて強力な選択プロセスを受けた。イヌは、オオカミやチンパンジーに比べて、ヒトとのコミュニケーションにおいて、ヒトに類似したジェスチャーを利用することに長けており、またイヌは解決できない課題に直面したときに、ヒトを振り返り、視線を用いてヒトを操作することさえある。これらの結果から、イヌは家畜化の過程で、独自の認知能力を獲得したと考えられる。興味深いことに、日本の柴犬や秋田犬などのアジア原産の犬種は、遺伝的にヨーロッパ原産のイヌとは異なること、また行動や気質も異なることが知られており、イヌの家畜化の過程を理解する上で特徴的である。イヌの家畜化は、イヌに対するヒトの選択交配だけではない。イヌ自身が、ヒトの文化的側面を許容して、適合してきた可能性も大きい。つまり、イヌの家畜化、特に地域ごとの犬種の違いを理解することは、それぞれの地域文化を理解することにもつながる。本講では、イヌの家畜化と、その家畜化の中での日本犬の特徴を紹介し、その遺伝―文化の相互作用を考察する。
keywords: イヌ、遺伝子、行動、共進化
Behavioral and Genetic Changes in Canine Domestication
Takefumi Kikusui [1][2], Miho Nagasawa [1][2]
[1] Sch. Vet. Med., Azabu Univ.,[2] Cent. for Hum. Anim. Symbiosis Sci., Azabu Univ.